中山 潤  (アロマセラピスト・モデル)
専門:アロマセラピスト・モデル
年齢:n/a

SoHo Salon勤務 NY州認定エステティシャン・ネイリスト、
英国IFA認定アロマセラピスト、デブモデル


マンハッタンは生き易い街だが、生きにくい街でもある。どんな人でも受け入れてくれるが、これでもか!というほど容赦ない試練が次々と襲いかかってくる。だから軽い気持ちで来ると痛い目にあう。でもあらゆる困難を乗り越えたら人は強くなる。そして人生に夢を持ち、生きることに貪欲になる。マンハッタンにはそんな人たちが大勢生活しており、彼らによってこの街はますます魅力を増していく。


この街には最高級の世界がある

中山潤にはじめて会った時、私は「生きることに貪欲な人だ」と感じた。日本に戻ったなら今までのキャリアで十分な生活ができると言うのに、決して帰ろうとはしない。米同時多発テロ直前にアメリカに来たのだから、経済環境は悪くなるばかりだ。働き口も簡単には見つからない。夫は東京に戻った。それでも彼女は「今はまだ帰るわけにはいかない」とこの街に固執する。かといって話す表情は決して暗くない。根本的なところで「自分ならやれる」という自信があるのだろうか。今後の展開を見守りたいと思った。
  大学を卒業後、アロマテラピーの勉強のために渡英。エステティシャンとして、アロマテラピストとしての公認資格をとって帰国した。東京・広尾にある資生堂の高級サロン「ビサージュ」で勤務したのち、独立して青山に自分のサロンを開く。アロマテラピーや美容に関するエッセイを書いたり、テレビに出演するなど、輝かしい実績を持つ。
  アメリカ人との結婚を機に一昨年渡米した。外国人との結婚に家族は反対したが、押し切った。ニューヨークで、これまでのキャリアにさらに磨きをかけようと思っていた。日本での実績は十分通用すると思っていた。
  ところがマンハッタンは甘くはなかった。アメリカにはアロマテラピストの資格制度ない。イギリスで2年間、猛勉強したのにそれが認められないのだ。しかもエステティシャンとしての資格も取り直さなければならなかった。貯金で食いつなぐつもりだったが、最初のルームメイトに騙された。とても専門分野では食べていけないと、普通の就職先を探したが、アメリカ経済はテロを機に悪化していた。あらゆる面接にことごとく落ち、夫は働き口を求めて日本に戻った。
  たった一人でこの街と格闘し、今のサロンに就職したのは渡米してから1年以上が過ぎた昨年秋だ。固定客がつくまで給料制で働いているが、「収入は大学時代のバイトよりも少ない」。ビサージュでの経験をもとにメニューを開発するが、固定客はそう簡単には増えない。腕には自信があるけれど、この街では誰も自分の存在を知らない。「32年間の人生で、今がどん底」と彼女は言う。でも帰るわけにはいかない。この街には「最高の世界」がある。美容の世界でも同じ。最高級のサロンがマンハッタンには存在する。そんなサロンで経験を積み、「インプルーヴしてから日本に帰りたい」のだ。

コンプレックスを逆手にとって

 実は、エステに興味を持つようになったのは、自分の体型に対するコンプレックスからだった。幼いころから肥満気味で、いつも痩身に興味を持っていた。30キロの減量に成功したこともあるがすぐにリバウンドしてしまう。モデルをやっていたスリムな妹を見ながら、いつも「自分は損している」と感じていた。学生時代は男子生徒に「デブ!」とからかわれ、資生堂のサロンで働いていた時も上司からは常に痩せるよう注意されていた。「自分自身が否定されているようで、次第に自信を失っていった」。
  転機は27歳のころに訪れた。デブモデルとしてテレビCMなどで活躍するようになり、メークアップなど仕事の領域も広がっていった。「デブが自分のキャラとして受け入れられるようになった」のだ。今では「デブだったからこそ、エステに興味を持って勉強し、今の自分がある」と自信を持って言える。
  僕のアメリカ生活も15年が経った。そんなに長くアメリカにいられるコツはとよく聞かれるが、僕はいつも「図太く生き残ることかな」と答えている。マンハッタンで生き残っていくのは本当に大変なことだ。2年前、テロで会社が傾いたとき、手がけていた事業をいくつも手離した。もちろん悩んだ。「そんなカッコ悪いこと今更できるか」と。僕にとってそれは敗北を意味するからだ。でも「どんなことがあっても、オレは最後まで絶対に諦めねぇぞ」っていう一番大事なプライドを守るために、つまらないプライドを捨て、土下座してでも生き残る道を選んだ。そのプライドがあったから、僕はこうしてやってこられた。
  インタビューの最中に中山さんは言った。「これまでの実績に対するプライドを捨てられたら、もっと生きやすいかもしれないけれど…」。プライドを持って、プライドを捨てられる人が、本当に強い人間だと思う。自信がなかったら、裸になって自分をさらけだすことなんてできないのだから。中山さんが自分自身とどう折り合いをつけていくのか、僕は陰ながら応援していくつもりだ。(文・板越)


 

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