Kicell (ミュージシャン)

アメ★ドリ独占インタビュー
Kicell -キセル-


“言葉が伝わらなくても音楽は伝わる”

 京都出身の兄弟ユニット「キセル」が、ジャパンソサエティで行なわれた村上隆氏キュレーションのグループ展「Little Boy〜爆発する日本のサブカルチャーアート」のテーマ曲を担当、同会場でライブパフォーマンスを披露した。
  自分達が感じる空気を、音で表現するキセル。兄の豪文と弟の弘晴が奏でるナンバーは、独特で癒し系だ。そのサウンドに賛同する著名人は多い。4月7日のレセプションパーティでライブを行う為に訪米したキセルに本紙が独占インタビューをした。

●キセルの由来

 独特な雰囲気を持つキセルは、ユニット名からして独特だ。その由来は、「何となく」で単にキセルという音の響きが気に入ったからだそうだ。このようにキセルの二人は、己の感性をとても大事にしている。結成のきっかけは、弟の友晴が高校の文化祭で曲を作る際に兄の豪文が手伝ったことだ。そして、友晴の高校卒業と共にキセルを結成した。この自然体の兄弟は、「話は合わないが、音楽性は合う」(弘晴)と根底の部分で繋がっている。

●今のスタイルが確立したきっかけ

  キセルは、以前は今のような抽象的なジャンルではなく、ロックなどの色々なジャンルを演奏していた。今のスタイルを確立するきっかけとなったのは、「色々な人達との出会い」(豪文)という。その中でも特に影響したのが、録音エンジニアの内田氏との出会いだ。内田氏とのレコーディングは、特殊で楽しかったそうだ。そこでキセルは、編曲の際にロック、ポップなどの特定のカテゴリーに当てはめるのではなく、どのように音というものを表現するのかを内田氏から学んだ。その表現方法は、「どこかの場所」といったような風景でも、「この曲は青色」と色でも何でもいい。具体はなく抽象。内田氏との出会いが今の抽象的なサウンドを生み出すきっかけとなった。

上隆氏との交流

  オタク層をくすぐるアニメなどジャパニーズ・サブ・カルチャーで注目され、近年
ではルイ・ヴィトンとのコラボで有名な現代美術アーティスト村上隆氏。キセルと村上氏は、村上氏が定期開催する総合アートイベント「GEISAI」へキセルがライブ出演したり、最近発売されたキセルのベスト盤『タワー』に村上氏が選曲に参加したりと、交流を深めてきたようだ。そして今回、村上氏はキセルの「エノラ・ゲイ」という曲に注目した。アートと原爆の関連性がテーマのひとつとなる「Little Boy」展のプランとの出会いを感じ、イベント会場でのライブ・オファーに至ったそうだ。ライブのほかに、この「エノラ・ゲイ」は「Little Boy」「窓に地球」が「The Earth in My Window」として英語ヴァージョンで再録音され、展覧会カタログに特別付録として付いた。

●インスピレーションが大事

  キセルは、曲作りの際にインスピレーションを大事にしている。それは、言葉の持つ響きであったり、雰囲気などである。「エノラ・ゲイ」が生まれたのもそのような経緯からだ。テーマ曲「エノラ・ゲイ」は、兄の豪文が新聞でエノラ・ゲイの記事を読んだのがきっかけで生まれた。エノラ・ゲイは、広島に投下された原爆「リトルボーイ」を搭載していた爆撃機のことで、現在スミソニアン博物館に展示されている。豪文は、そのエノラ・ゲイが地元で「ヒーロー扱い」されているのに驚いたそうだ。それで豪文は「エノラ・ゲイ」にヒーロー像を見立て、「エノラ・ゲイ」という言葉が持つ響きにカッコ良さを感じた。そのような過程を経て出来上がった「エノラ・ゲイ」は、特に反戦をテーマに込めた曲ではなく、日本人にとって際どいテーマでも全く暗さを感じさせない曲に仕上がっている。キセル独特の臭いがする曲だ。

●言葉が伝わらなくても音楽は伝わる

 今回が初海外の弟と2回目の兄には、もちろん言葉の壁があった。曲紹介では兄がカンニング・ペーパーを見ながら必死に伝えようとしていた。しかし、兄の豪文はそんな言葉の壁は気にならなかったそうだ。なぜなら、「言葉が伝わらなくても音楽が伝わった」(豪文)からだ。実際に、最後の曲の際にはステージ付近に人だかりが出来、キセルの曲は多くのアメリカ人の心をわしづかみにしていた。そのためか、アンコールで再登場した時の二人の表情は、緊張していた第一ステージの表情とは打って変わって、「自分達の音楽が伝わった」という自信に満ち溢れていた。正に音を楽しんでいた。キセルの二人は、「空間」や「感情」といった無形のもので音を表現する。
  今ライブでの鋸を使った演奏が、その典型だった。鋸が奏でるサウンドは、(そのパートの)楽譜などはもちろんないので、その日の感情、体調によって変動する。弘晴は自分のサウンドを「空気間で伝わらせる」と言えば、兄の豪文も「喜怒哀楽を音楽で表す」と続ける。「反応が直に伝わってきて嬉しい」と素直に喜ぶ。二人は、再度アメリカでライブをしたいと言っている。(一野 洋)

【キセル】
  京都出身の辻村豪文(兄)、弘晴(弟)の兄弟デュオ。兄がメイン・ボーカルとギター、弟がコーラス、ベースを担当。99年から活動をスタート。インディーズ時代から着々とファンを増やし、01年にアルバム「夢」で待望のメジャー・デビュー。5月21日にはニュー・シングル「夏が来る」&ニュー・アルバム「旅」同時リリース。

 

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